西村真悟  北方領土に関する日露連携の世論誘導工作と「正論」

北方領土に関する、とんでもない世論誘導が行われているのを感じる。
 その誘導のために、まず、我が国の北方領土を「北方四島」と呼ぶことを常態化させる。
 その上で、四=二+二、だから、
北方四島の日露の「引き分け」は、二と二の折半になるとくる。
 
 では、具体的に「引き分け」で我が国が確保する二島とは何か。それは、歯舞と色丹だ。
 昨年と一昨年、ロシア大統領メドベージェフは、我が国の国後に不法上陸してきて国後・択捉の開発を指令している。
 そして、現大統領のプーチンは、この前大統領の行動を前提にして「引き分け」と言っているのだから、「引き分け」でロシアが取るのは国後と択捉で、日本が取る二島は、当然、歯舞と色丹となる。
 また注意すべきは、この「引き分け」は、日本国内にある「二島返還論」に呼応したものである。
 
 しかしながら、このロシアの「引き分け」と日本の「二島返還論」は、例えば等しい大きさの四つの碁石を、二と二に二等分するように見せかけて、これが「引き分け」、「折半」だと錯覚させようとしているに過ぎない。そのために「北方四島」という呼び方を利用しているのだ。
 つまり、トリックである。
 従って、引き分けや二島返還と結びついた北方四島の呼称が要注意なのだ。
 
 しかし、国後、択捉、歯舞群島そして色丹は、決して四島ではない。歯舞群島は、水晶島、秋勇留島、勇留島、志発島と多楽島からなる。
 しかもその面積は、
国後は、1490平方キロメートル
択捉は、3180平方キロメートル
色丹は、255平方キロメートル
歯舞群島は、100平方キロメートル
 ちなみに、沖縄本島の面積は、1208平方キロメートルだ。
 従って、「引き分け」と「二島返還論」は、
国後と択捉という沖縄本島を四つ合わせた面積の日本の国土をロシアが獲得し、
歯舞群島と色丹という沖縄本島の四分の一の面積の国土を我が国が返還を受けるということになる。
 領土の喪失、実に甚だしいものがあるではないか。
 
 しかしながら、日本国内の二等返還論者も、引き分け論のプーチンも、このことを承知の上で、トリックの「譲歩案」としてこの論を提唱している。
 しかも本年に入り、急速に北方領土の内の大半は、ロシアに差し上げること致し方ないとの風潮が表面にでてきて、プーチンの「引き分け」に打てば響くように呼応して二島返還論者が勢いづいてきた。
 柔道を愛する親日家のプーチンが「引き分け」と言ったではないか、今がチャンスだ、このチャンスを逃してはならない、と言う訳だ。
 総理大臣の特使とやらの御仁の、国後と択捉の間の線引き論も、この風潮に乗って思いついたか、誰かに耳打ちされたものだ。へぼ将棋ではあるまいに。
 この御仁の線引きは、択捉をロシアに渡せと言っているのだが、残りの三島の面積の合計は、択捉一島の約半分にすぎない。

 しかしながら、国土、領土とは、我々の体の一部ではないか。
 これでいいのか。
 
 仮に、二島返還つまり引き分けに我が国が乗ると言って日露会談が始まったとしよう。
 この会談が始まった時点で、ロシアは完全に国後と択捉を掌中に入れている。我が国は後戻りできない。
 それで、我が国は、歯舞群島と色丹を取り戻せるのか。
 これが問題だ・・・実は、その保証はない。
 我が国が歯舞と色丹に手を伸ばそうとすると、ロシアは、ちょっと待てと、ここから交渉をはじめる。そして、決して歯舞と色丹を我が国に渡さない。
 ロシアは、再び、この線から我が国に、さらに引き分け、折半を要求してくる。引き分けに乗った者にさらに引き分けを要求して、結局我が国の取り分を四分の一にする。
 これがロシア式の交渉だ。
 確実にそうなる。
 だから、今、ロシアの提案に飛びついてはならない。
 プーチンも、問題、いや、恐怖を抱えているから「引き分け」を言って我が国に秋波を送っているのだ。ロシアの大統領、プーチンの足下を観るべきだ。

 先日、久しぶりにビートたけしさんの「テレビ・タックル」に出演した。
 北方領土の問題が話題になった。
 そこで、番組に、歯舞か色丹の元住民の高齢の方が出演されて、二島返還を提唱している出演者に、よろしく頼むと言われた。
 それを受けて、出演者は、涙ながらに、元住民の方がお元気なうちに郷里の島が返還されねばならないと焦燥感に駆られるがごとく決意を述べた。
 そのときの関心は、完全にこの高齢の方の故郷である歯舞と色丹の「引き分け」による返還に絞られていた。
 しかし、高齢になった住民が生きている内に郷里に帰らねばならないならば、百万人の県民がいる沖縄本島の四倍の面積を持つ国後と択捉にこそ、多くの元住民がおられるのだ。
 この国後と択捉の元住民のことはどうなるのだろうか。

 私は番組で、次の通り言った(放映されなかった部分も含む)。
 我が国は歴史的には、全樺太と全千島の返還をロシアに要求すべきだ。
 まず、ロシアの前で、正々堂々と歴史の事実を振りかざして、我が国の北方領土とは、全樺太と全千島だと主張すべきだ。

 その上で、交渉をはじめる。
 決して、プーチンの引き分けに乗ってはならない。
 そして、ロシアがシベリア開発に成功するかどうかに国家の存亡がかかっているならば、ロシアに対して、我が国に北方領土を返せ、そうすれば我が国はシベリア開発に協力する、と宣言するべきである。
 シベリアと沿海州には、続々と支那人が入り込んでいる。
もうすぐ、ロシア人の数よりも支那人の数のほうが多くなり、我が国の協力がなければ、極東ロシアは支那に飲み込まれる。

 この発言中に驚いたのは、私が、シベリアの人口はいずれ支那人のほうが多くなる、既に大量の支那人が入り込んでいる、と言ったとき、二島返還論者も自民党から出席した議員も、口をそろえて「ウソだ、そんなことはない」と私の発言を野次り、否定したことだ。
 そのとき私は、彼ら対ロシア宥和論者は、何かを国民の目から隠そうとしていると感じた。

 事実は、広大なロシアのシベリアには、ロシア人は六百万人しかいない。そして既に二百万人の支那人が入り込んでいる。沿海州もしかりだ。
 ロシア大統領には、うかうかすると極東ロシアは、イナゴのように押し寄せてくる支那に飲み込まれるという恐怖感があるはずだ。
 我が国は、ここを突いて北方領土の返還をロシアに迫るべきである。海の上の小さな強奪した島に固執して、広大な資源の豊富な全シベリア、全極東ロシアを失うのか、と。

 以上で私の論は終わるが、どうか続いて、専門家のしっかりした基礎の確かな論考を読んでいただきたい。
 それは昨日三月二十六日の産経新聞朝刊に掲載された
北海道大学名誉教授、木村 汎先生の正真正銘の「正論」である。
 その結語を次に転載させていただいて本稿を終える。

「日本とロシアも先例に倣って『土地と発展』の交換を図るべきであろう。
 つまり、日本は北方四島を得るのと引き換えに、ロシア極東の発展に協力する。
 事態がこのままで推移するならば、ロシア極東は早晩、中国に飲み込まれ、事実上勢力圏に入ること必定だろう。
 もしそれを阻止し得るとすれば、ロシア極東の1250分の1でしかない北方四島の返還などお釣りが来る取引になる。
 以上は、ロシア側が決断すべきことかもしれない。
 ただ、日本人が認識すべきは、ロシアの方こそが今後、日本を必要とし、その逆ではないということである。」


平河総合戦略研究所メルマガ(2012年3月27日 NO.1364号 )転載
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